法定相続情報証明制度は、とても便利な制度だと思いますが、まだどこの金融機関でも受け付けてくれる状況にはないようです。
他サイトでも、制度を利用すべき場合と利用すべきでない場合について説明しているケースもあります。
しかし、”終活”の視点から考えると知っておいてもムダにはなりません。自分自身の血縁関係を整理するため、あるいは実際に制度を利用する遺族にとってもその後の手続きが円滑に進むと考えるからです。
制度の概要について、ポイントをまとめてみましたので参考にしてください。
法定相続情報証明制度とは
法定相続情報証明制度の趣旨について、法務省のホームページでは次のように説明しています。
現在,相続手続では,お亡くなりになられた方の戸除籍謄本等の束を,相続手続を取り扱う各種窓口に何度も出し直す必要があります。
法務省HP:「法定相続情報証明制度」について
法定相続情報証明制度は,登記所(法務局)に戸除籍謄本等の束を提出し,併せて相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を出していただければ,登記官がその一覧図に認証文を付した写しを無料で交付します。
その後の相続手続は,法定相続情報一覧図の写しを利用いただくことで,戸除籍謄本等の束を何度も出し直す必要がなくなります。
一覧図は相続人側で作成しなければなりませんが、それに認証文を付けた写しの交付については無料なのでコスト的には負担がありません。
法務省にとっても都合がいい制度?
法務省のホームページには、法定相続情報証明制度のトップページに”不動産の所有者が亡くなられたら相続登記を”の案内文が掲載されています。
不動産の相続登記は、相続が発生すれば必ずしも相続人に名義変更されているものとは限りません。何代も前の所有者の名義のままになっているものもかなり多いのが現状です。
そんな、相続登記が未了のまま放置されている現況について、法務省として把握しやすくなるメリットがあります。
法務局が調べなくても、遺族が一覧にして提出してくれるわけですから・・・。
法定相続情報証明制度のフロー
法定相続情報証明制度のフローは、とても簡単です。謄本の取り付けを除けばの話ですが。
① 戸籍謄本などの必要書類を集める
② 法定相続情報の一覧図を作成する
③ 申出書に記入し登記所へ届出する
④ 法定相続情報一覧図の写しの交付
手続きに当たっての必要書類
<必須書類と取得先>
① | 被相続人(亡くなられた方)の戸除籍謄本 ※出生から亡くなるまでの連続した戸籍謄本及び除籍謄本 | 被相続人の本籍地の市区町村役場 |
② | 被相続人(亡くなられた方)の住民票の除票 | 被相続人の最後の住所地の市区町村役場 |
③ | 相続人の戸籍謄抄本 ※相続人全員の現在の戸籍謄本又は抄本 | 各相続人の本籍地の市区町村役場 |
④ | 申出人(相続人の代表となって手続を進める方)の氏 名・住所を確認することができる公的書類 ※運転免許証のコピーなど | - |
<場合により必要な書類>
⑤ | (法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載する場合) 各相続人の住民票記載事項証明書(住民票の写し) | 各相続人の住所地の市区町村役場 |
⑥ | (委任による代理人が申出の手続をする場合) ⑥-1 委任状 ⑥-2(親族が代理する場合)申出人と代理人が親族関係に あることが分かる戸籍謄本(①又は③の書類で親族関係が分か る場合は,必要ありません。) ⑥-3(資格者代理人が代理する場合)資格者代理人団体所 定の身分証明書の写し等 | ⑥-2について、市区町村役場 |
⑦ | (②の書類を取得することができない場合) 被相続人の 戸籍の附票 被相続人の住民票の除票が市区町村において廃棄されているなど して取得することができない場合、被相続人の戸籍の附票を用 意します。 | 被相続人の本籍地の市区町村役場 |
法相続情報一覧図の作成
法定相続情報一覧図は、被相続人と法定相続人全員の関係が分かるように整理した図です。
相続割合や相続放棄など、遺産分割の結果を記載するものではありません。もっとも、具体的な遺産分割は法定相続人を確定してからなので、この制度を利用する段階では決まっていないと思いますが・・・。
法定相続情報証明制度を活用できる手続き
法定相続情報証明制度を活用できるのは、次のような手続きです。
- 不動産の登記
- 自動車の登記
- 預貯金の名義変更や解約
- 相続税の申告など
公的な手続きについては法定相続情報証明制度を活用できますが、民間の手続きでは足並みが揃っていません。
たとえばみずほ銀行の場合、”相続のお手続きの流れ”の項で、次のように説明しています。
法務局発行の「法定相続情報一覧図の写し」(登記官の認証文言付きの書類原本)をご提出いただく場合は、被相続人が亡くなられたことおよび相続人を確認させていただくための戸籍謄本のご提出は原則不要です。
みずほ銀行HP
いずれにしても法相続情報一覧図の利用については、各金融機関あるいはカード会社に確認する必要があります。
法相続情報証明制度はデメリットとの意見もあるが・・・
相続関係の手続きは、謄本等取付け書類の原本を各所々々へ持ち回れば済むわけですから、面倒な一覧図を作成する必要はないとの意見もあります。
しかし、この一覧図を作成しないと実際の法定相続人の確定は難しいですし、結局はどこかの時点で作成するようになるでしょう。
勿論、弁護士や司法書士の先生に依頼することもできますが、自分で整理してみるのも終活だと考えます。
謄本(写し)の申請は、全国の市区町村役場でも郵送で受け付けてくれますし、どこの役場でも丁寧に説明してくれます。ただ、同じ役場でさらにさかのぼって取り付ける場合もあるので面倒なのは確かです。
そのためにも、”終活”の一環として自身の一覧図をまとめてみるのも有意義です。遺族が、その一覧図を生かすことができますよね。
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