節税目的の保険を大手生保が販売中止!

生命保険
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大手生命保険会社が、節税目的の中小企業向け生命保険の販売をとりやめました。

ある大手生保の情報によれば、2月14日提案・2月20日契約締結済までに締結したものはOKとのこと。決算期を向かえ、企業側の決算にも影響がでてきそうです。

”節税”として報道されていますが、正確にいえば”利益の繰り延べ”です。つまり、利益の先送り。

これらの保険は、生命保険料の一部または全額を損金として会社の経費勘定とすることで、その年の利益を圧縮(下げる)効果があり、多くの企業で利用されてきました。

しかし、その目的が生命保険本来の目的ではなく、単に節税策として使われてきたことに国税庁がメスを入れた形。今後、ルールを厳格化していくようです。

節税タイプの保険の取扱いを止めた大手生保

節税タイプの保険の取扱いを止めるのは、大手生命保険会社、日本生命・第一生命・明治安田生命・住友生命の大手4社で、2月14日から。

取扱いを止めた理由は、契約後の税制改正により、顧客の混乱を招かないためとしています。これらの保険は、これまで中小企業の節税策として積極的に使われてきました。

生命保険会社の販売戦略に大きな影響があるのはもちろんですが、3月決算を前に、企業も新たな対応策を考えなければいけないようです。

全額損金タイプの保険を例にとって、わかりやすく説明します。

全額損金タイプの保険とは

掛金(保険料)を、会社の損金として全額落とすことができる保険です。「定期保険」の一種で、「全額損金定期保険」とも呼ばれています。

ポイントは、数年後に解約したときに「解約返戻金」が戻ってくることで、
利益が出ている企業にとっては節税対策の最有力アイテムになっています。

全額損金タイプの2つのメリット

●利益が出ているときに保険料を全額損金として計上できる
●数年後に解約したときに「解約返戻金」が戻ってくる

<解約返戻金>
保険商品によって違いがありますが、数年後に解約したときに、掛金総額に対して50~90%前後の「解約返戻金」が戻ってくるのが特徴です。
ピークは、7~8年前後でしょうか。商品によっては、100%を超えるものもあります。

払った保険料が戻ってくるだけ?

個人の保険で考えれば、”ぜんぜん得しないじゃない?”ということになるかもしれません。でも企業にとっては、事業承継対策として使い勝手のいい商品なんです。

生命保険ですから、戻ってくるとかこないとか、そもそもそういう考え方が間違っていると国税庁が指摘しているわけです。

事業承継対策としても便利な保険

企業が全額損金タイプの保険を活用する理由の一つに、オーナー企業の「事業承継対策」があります。

事業承継というのは、ひとことで言えば”会社といかにして次の世代に引き継ぐか”ということ。創業者にとって、”終活”の最大のテーマです。

また、その後の生活を考えたら、”何もなく手ぶら”というのも寂しい話です。そこで、利益が出ているときに積み立て?ておいて、数年後に役員退職金として受け取ろうという計算です。

会計上のメリットも!?

退職金は全額損金で落とせる!?

役員の退職金は、金額が損金算入できるとは限りません。年俸や功績などの要素が加味されますから、単純にいくらなら落とせるとは言えません。
通常、「功績倍率方式」を使い、計算式は次のとおりです。

<役員退職金の算定方法>
役員退職金=最終役員月額報酬×役員就任年数×功績倍率

全額損金タイプの保険を事業承継にどう使う?

会社を後継者に引き継ぐときに、一番の課題は”株価”です。

儲かっている会社ほど、株式の評価額は高くなります。普通なら喜ばしいことですが、いざ事業承継ということになると必ずしもそうはいきません。

会社の資産が10億円なら、その株式の評価額は基本的には10億円と考えていいでしょう。

全額損金タイプの解約返戻金が戻ってきたら、その年の利益として計上しなければなりません。もし解約返戻金が1億円なら、会社の資産価値は11億円になってしまいます。

しかし、役員退職金としてその金額を計上できれば、「特別損失」として全額損金計上できる可能性があります。

解約返戻金をそのまま利益計上するのであれば、これまでの保険料を損金として落としてきた税務上の効果はなくなりますが、役員退職金として、特別損失として計上することで損益相殺ができる仕組みです。

このままでは創業オーナーの相続財産が増える?

事業を引き継ぐだけなら全額損金タイプの保険は有効といえますが、問題は創業オーナーの個人資産が増えてしまうこと。

役員退職金として1億円を受け取れば、創業オーナーの個人資産が1億円増えることになります。

しかし賃貸不動産などに変えることで相続対策も可能ですし、勇退後元気で健康ならいくらでも使い道がありますよね。

全額損金タイプの保険は若くて健康な役職員につける?

ところで全額損金タイプの保険は”節税”が目的のはずですから、被保険者(保険を付ける対象者)は、若くて健康なほうがいいことになります。途中で死亡したら困る?ことに・・・。このことも、保険本来の目的と違うという理由の一つです。

十分な利益が出ていなければかけ続けられない!

全額損金タイプの保険は、毎年安定した利益が出ている企業でなければ付保する意味がありません。途中で高額な保険料を負担しきれなくなって解約するケースもあります。

これでは、なんのために保険を付けたのかわからなくなってしまいます。

まとめ

生命保険は、相続対策や事業承継のために使い勝手のよい需要なツールです。しかし、商品本来の趣旨から大きくはずれてくれば、監督官庁もそのまま放置できないくなります。

法改正は頻繁におこなわれますから、現行法だけを基準にしたガチガチの相続対策や事業承継対策はあまり得策ではないかもしれません。

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