2020年1月から、損保大手4社(東京海上、三井住友海上、あいおいニッセイ同和、損保ジャパン日本興亜)の自動車保険料が、約3%上がります。
自動車保険料の値上げの理由は、2つ。
消費税率の引き上げによる支払保険金のアップと、2020年4月に予定されている民法改正にともなうライプニッツ係数の変更です。
いずれ、他の保険会社も保険料率をアップしてくることになるでしょう。
ライプニッツ係数は、事故の相手(被害者)への賠償金を支払うときの計算で使われますが、現行の法定利率5%から法定利率3%へ引き下げられることに。
法定利率が引き下げられると、賠償金額がアップして、保険会社の支払保険金が大きくなります。この仕組みを、実際に試算してみましたので、参考にしてください。
自動車保険料アップ!ライプニッツ係数と賠償金額の関係
自動車事故に限らず、賠償事故によって相手方(被害者)が働けなくなったとき、加害者は被害者に対して賠償金を支払わなければなりません。
このときの賠償金として、慰謝料のほかに「逸失利益」があります。
逸失利益は、もし元気で働くことができたとすれば、将来稼ぐことができたであろう利益(収入)のことです。
一般的には、67歳まで働くことができると考えて、事故のときから67歳までの年数が就労可能年数になります。今は、もっと働ける?なんて声もありますが・・・。
もし、37歳で事故にあって死亡した場合、30年間が就労可能年数ということになります。
年収700万円なら、30年間で2億1千万円になりますが、数十年後の収入を先払いするわけですから、年間の利息分を割り引いて計算します。
そのときに使われる係数が、ライプニッツ係数です。
<ライプニッツ係数>法定利率5%⇒3%で賠償金が高くなる?
年収:800万円
就労可能年数:30年
ライプニッツ係数:15.3725(法定利率:5%)
本人生活費:50%
※ライプニッツ係数(30年):19.6004
事故日が1日違いで賠償金に大きな差
2020年3月31日の事故では、法定利率5%のライプニッツ係数を適用しますが、4月1日の事故なら、法定利率3%の係数を適用します。
その結果、わずか1日の違いで賠償額に大きな違いが出ることになります。
もちろん、事故の被害者にならないほうがいいわけですが、30年間の逸失利益で30%近い差が出たことに驚きます。
賠償金を年率3%で運用できる?
賠償金のうち逸失利益は、これまでの説明のとおり、一定の年率で運用するものとして割り引いて、他の賠償金といっしょに支払われます。
このシミュレーションでは、高額な逸失利益と思われるかもしれませんが、残された家族にとって、30年間の生活費と考えるとけっして高すぎる金額ではありません。
しかも、年率3%で確実に運用できるのか、という問題が残ります。
今、一般的に、金融資産の運用利率は2%と言われていますが、元本が保証されているわけではありませんし、大手証券会社のプロでも損失を出している状況です。
大手証券会社で、大口取引先に対して損失補填をしていたニュースは、まだ最近のこと。
受け取った賠償金の全額を、安全で確実に3%で運用できるマーケットは無い、ということだけは承知しておくべきでしょう。
さらに、物価上昇や消費税、寿命の長期化、受給年金が無いことなど、不安定な変動要因を考えあわせると、できるだけ計画に取り崩していかなければならないのは確かです。
自動車保険料が上がる前に検討すべきこと
今回の自動保険料の引き上げは、2020年1月1日以降危険開始の契約についてです。
引き上げ率は3%ですから、現在の自動車保険料が10万円なら3千円の負担増。金額は小さいですが、消費増税に続く値上げですから無視はできません。
もし、無事故等級が最高等級(20等級)まで進んでいるのであれば、料率引き上げ前に中途更改するのも一つの方法です。
ただし、現在契約の残存期間が長い場合、日割解約で中途更改手続きできれば、メリットがありますが、日割解約できなければ、残存期間によっては損することに。
もう一つは、この機会に、他の保険会社と保険料を比較してみるのもおススメです。もちろん、現在の保険会社の代理店と深いつながりがあれば別ですが・・・。
保険は、一度契約すると、よほどの事情がないかぎり、そのまま継続することが多いですね。
昔は、どの保険会社で契約しての同じ保険料(掛金)でしたが、今は、保険会社によってかなり保険料が違うので驚きます。
今なら、検討する時間はたっぷりあります。ぜひ、夏休みにゆっくり検討してみてください。
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