どんなに気にいった美術品でも、何代にもわたって引き継いでいくのは難しいですね。
山内容堂のコレクションの能面が英国の2つの博物館で見つかったようですが、そのうち1つは、ロンドンの大英博物館です。
山内容堂は、江戸幕府に大政奉還を進言した土佐藩士で、日本史を勉強した方ならよく知っている名前だと思います。
発見されたのは5点とのことですが、すべて同じ時期に日本から流出したのかもしれません。まだ他から発見される可能性もあります。問題は、なぜこれほどの名士が大事に所蔵していた能面が5点も英国の博物館で見つかったのかということ。
能面の流出は山内容堂の終活?
自らも能を舞うほどの愛好家だった山内容堂が、50もの能面を手放した理由は、”終活にあったようです。それにしても、今の価値に換算すると相当な金額になります。
手放すときの心境は、とても辛かったでしょうね。
山内容堂の終活事情
調査した法政大学能楽研究所の宮本圭造教授によれば、山内容堂は土佐藩主でしたが、明治維新によって大名家の境遇は大きく変わったとのこと。
亡くなる前、明治4年ごろから狭い屋敷に引っ越し。どうやら、この頃に所有していた能面を手放した可能性が高いと説明しています。
もともとの屋敷は相当な広さだったと思われます。能面の他にも多くの美術品などの所蔵品があったはずですから、収納スペースとしての蔵がいくつもあったはずです。転居と同時に、一気に処分する決心したということだと思います。
美術品の保管は大変!
山内容堂のコレクションは、幸いにも大英博物館などの美術館に納められていましたから、保管状態はベストコンディションと思われます。
このような美術品を保管する場合、温度や湿度、日光など紫外線からの保護が必要になりますから、一般家庭での管理状況では、美術品の傷みもかなりひどくなると思われます。
日本画であれば、シミは避けられません。
押し入れの隅などに長い間しまっておいた掛け軸を、思い出したように引っ張り出して広げてみると、あちらこちらに薄茶色の丸い点々が・・・。最悪です。
洋画なら、絵の具に細かなひび割れ。木製の額縁の場合、しっかりしたものでなければ、四隅の接合部分が外れてきたり・・・。
淡いトーンの作品なら、なおさら痛みが目立ちます。
変わらないのは、陶磁器ぐらいでしょうか。
大事な美術品ほど早めに処分したほうが!?
よほどの豪邸でもなければ、家のスペースはどんどん狭くなっていきます。大事な美術品もベストな状態で管理するのは、まず無理。
傷みが出る前に、きちんと管理・鑑賞してもらえる方に所有してもらうのが、美術品にとっては幸せです。
山内容堂ではないですが、自分で管理する自信とスペースが無くなってきたら、思いきって早目に美術商などを通して、売却・寄贈・処分することが、美術品にとっては最良の選択肢だと思います。
私は、掛け軸や洋画の一部を、テレビ番組でも人気の美術商に引取ってもらいました。購入したときの金額よりはるかに低いものもありましたが、作品にとっては幸せです。
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