一つの会社に長く勤めていると、辞めたくなったり、転職を考えたことが一度や二度はあるはず。なかには、入社してすぐなんて人も。
大学を卒業して、せっかく入社した企業を2~3年以内で辞めてしまう離職者のことを「第二新卒」と呼びます。
”我慢が足りない”と言う人もいますが、中途採用の面接でよくよく事情を聞いてみると、辞めざるをえないケースが多いことに気づかされます。
転職したことがない人は、会社へ迷惑をかけるのではと心配したり、上司に引き止められたり、辞めるキッカケがつかめずに心身にトラブルを生じてしまうことも。
第二新卒の評価を見なおしたキッカケ
金融機関を定年後、従業員100人ほどの中小電機メーカーで総務の責任者をしていたときのことです。
経理兼務の総務部に欠員が出たため、ハローワークで人材募集。経理もできる即戦力がほしいところですが、賃金などの条件面でハードルが高くなってしまうため、経験や知識などの条件をつけずにハローワークで求人。
ハローワークから紹介されたのは、第二新卒者でした。大学を卒業後、大手飲食チェーンに就職し、入社時の研修を受けて間もなく退社した女性(Aさん)です。
それまでは、社会人としての基本もわからないうちに会社を辞めてしまうことが理解できませんでしたし、メンタルが弱ければ、採用してもすぐに辞めてしまうだろうとの先入観がありました。
しかし、Aさんの職歴に書かれた企業名から、その会社の労働環境や経営者の考え方がブラックに近いことを知り、その女性が会社を辞める決断をした理由がすぐに理解できました。
ようやく入社できた企業なのに、再就職先を決める前に、よく辞める決心ができたなというのが正直な印象。業種・職種が全く違う中小企業への応募ですから、よほどの覚悟だったと思います。
Aさんの本音を聞くことができたのは、採用面接のときでした。入社前に知らされていた社風や事前説明の業務内容などが、研修時ではまったく違っていたとのこと。Aさんは、そのギャップに疑問を感じたまま働くことに不安を感じ、あとさきを考えずに辞めたそうです。
Aさんは、学生時代に日本料理店でアルバイトをしていたそうですが、経営者や医師会の常連さんからも信頼されてきたことは、話の雰囲気からも伝わってきました。
自然な笑顔が素敵なAさんが、だれからも愛されるタイプであること、反面、その可愛らしい表情からは想像できない意思の強さと決断力があり、他の社員のリーダー的存在になることを確信し、採用を決めたのはいうまでもありません。
その後Aさんは、大事業では経験できない幅広い業務を積極的にこなし、総務部だけでなく、他部門との調整役としても活躍してくれました。
この採用経験をキッカケとして、技術系以外では、第二新卒者を積極的に採用するようになりました。
退職の動機について
仕事で失敗した、上司と反りがあわない、パワハラやセクハラに合ったなど、後ろ向きな動機だけでなく、同業他社や取引先からの誘いなど、動機はさまざまです。
30歳過ぎの役職者であれば、将来を見すえた前向きな転職を決めているなど、退職までのシナリオがしっかりできていると思います。
しかし、入社まもない20代では、上司から引きとめられたり、もう少しがんばってみようという気持ちから、退職・転職の機会を失ってしまうことも多いようです。
仕事や会社を変えるのは、そのときだけの問題ではなく、将来のライフスタイルや人生設計に大きくかかわってくることがほとんどです。
会社の考え方とあわずに退職、その後起業して成功した経営者もいますが、このようなケースは例外。もし希望の会社や大企業で働いているなら、我慢がむくわれる時がくるかもしれません。
それでも退職の決断をするのには、よほどの事情があると考えるべきでしょう。心身を病んでしまう前に、我慢の限界点を決めておく必要がありそうです。
なぜ20代、30代前半の退職者が多いのか
ある統計調査によれば、20代の退職者・転職者がもっとも多く、その理由として、残業が多いこと、給与などの労働条件に不満などがあげられています。
たしかに、新入社員に仕事へのモチベーションは期待できなくなっていますが、形式的な定年延長、実質的な給与減額、先輩社員のリストラなど、雇用環境が大きく変化するなかで、バラ色の会社人生をえがくのは難しくなっています。
20代ではじめての一歩を踏み出した新入社員が、入社前からの情報や、入社後の職場環境などから、将来への不安を感じたとしても不思議ではありません。
30代ぐらいまでなら有利な転職もできますが、役職がつき、家族の生活をささえるようになると、慣れた会社を辞め転職するのはかなりの勇気と決断力が必要です。
第二新卒といわれる20代、30代前半での退職・転職者は、我慢が足りないのではなく、むしろ人生の将来を見すえたうえでの英断というべきかもしれません。
「退職代行」を
退職したいと思っても、誰にどのように伝え、どのように手続きすればよいのかわからずに悩んでいる方も少なくありません。まして、その後の転職先や仕事が決まっていなければ、不安もつのります。
転職を繰り返してきたツワモノならともかく、社会人としての一歩を踏み出したばかりの新卒者(第二新卒)にとって、上司や先輩社員に”辞める相談”をするのは難しいでしょう。
上司から辞めないよう説得されることも多いですから、かなり強い気持ちが必要です。
「退職代行」を利用すれば、会社へ出社や連絡の必要がなく、退職手続きをスムーズにおこなうことができますが、その後の再就職活動への影響を心配する方もいるようです。
結論から言えば、そのような心配は無用です。
退職代行を利用したことを自分から話す必要はありませんし、もし狭い業界での再就職先であれば、辞めざるを得なかった事情を理解してくれるはずです。
退職代行を利用することに抵抗があるかもしれませんが、我慢して会社に残ることで心身を病んで、将来の人生設計を台無しにしてしまう方もいることは知っておいたほうがよいかもしれません。
コメント