”墓じまいとは、お墓を無くして供養もしないこと”と考えている方も多いですが、全国石製品共同組合では、次のように定義しています。
「本来のお墓を移転して建てる(改葬)ための1つのプロセス」
つまり、現在の墓を別の場所へ移す、あるいは別のかたちで供養するために、お墓を撤去して更地に戻す一つのプロセスのことを、「墓じまい」と呼んでいます。
けっして、故人を弔い先祖を供養する場を無くしてしまうのが目的ではないということです。
「墓じまい」で家族の負担が無くなる?
「墓じまい」の理由はいろいろありますが、”墓じまい”をした人を対象に、全国石製品共同組合が調査(調査期間:2018年6月1日~2018年6月30日)した結果によれば、つぎのようになっています。
- 後継者がいない 62.8%
- お墓が遠い 17.5%
- お墓の維持費が高い 13.1%
- 継承者がいるが子供に迷惑をかけたくない 6.6%
”後継者がいない”ために「墓じまい」をする人が、圧倒的に多いですが、2番目の”お墓が遠い”ことも、後継者にとっては大きな負担になっています。
命日や法事などでの交通費が、”お墓の維持費”以上にかかってしまうことも珍しくありません。
私の場合は、関西にあったお墓を東京へ改葬するために、「墓じまい」をしました。
改葬のプロセスとしての「墓じまい」
全国石製品共同組合では、「墓じまい」を、改葬のプロセスのなかで、次のように位置付けています。
② 元のお墓を撤去し更地に戻す。※「墓じまい」
③ 新しい墓地にお墓を建てる。
④ お骨を納め開眼供養をする
「墓じまい」の費用はどのくらいかかる?
テレ朝「ワイドスクランブル」の特集で紹介された例では、次のような内訳になっていました。
● 【関西】祖父母の墓を撤去
・墓の解体・撤去(1.5㎡) 8万円
・閉眼供養の僧侶手配 3万円
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合計 11万円
● 【埼玉・入間市】 伯父の墓を撤去
・墓の解体・撤去(1.5㎡) 15万円
・出骨料 3万円
・永代供養墓(伯父叔母2体分)25万円
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合計 43万円
2例だけですが、「墓じまい」そのものの費用は、お墓の規模によっても変わりますが、一般的には10~15万円前後が多いようです。
「改葬許可申請書」にはお寺のご住職の捺印が必要!
お墓の改葬は、「墓地、埋葬等に関する法律」に定められたルールに従って手続きをおこなわなう必要があります。
「改葬許可申請書」を役所へ提出して、お墓を移す(実際には遺骨を移す)許可を得る必要があります。しかし、お寺との関係がうまくいっていないと、申請書を作ることができないことがあります。
どういうことかというと、改葬許可証には、元のお墓を管理している管理者(住職)の捺印が必要だからです。
お寺にとって、檀家が減ってしまうことは、大きな痛手です。その心情を察して、失礼が無いようにお願いをしなければいけません。
”改葬は当然の権利”、”離檀料を払う必要がない”、なんて気持ちで印鑑を押してもらおうとしたら、だれしもいい気持ちはしないでしょう。
実際、寺が印鑑を押してくれないために、改葬ができない方も少なくありません。
離檀のときにお布施は要らない、という意見も耳にしますが、建て前論で言えばそうかもしれません。
これまで先祖のためにお墓を守っていただいた感謝とお礼の気持ちを形であらわすことは、故人への敬いだけでなく、これからの心の持ちようにもプラスになるはずです。
強引な交渉で、改葬許可申請書に捺印をもらったとしても、改葬されるご先祖が喜ぶことはないと思います。
「墓じまい」は専門家に頼んだほうが確実で安心
「墓じまい」は、一生のうちで何度もすることではありません。
私の場合、改葬先の寺との関係はもちろんですが、元の寺との関係もうまくいっていたので、手続きはすべて自分でおこないました。
しかし、かなり疎遠になっていたり、離れていて何度も行き来できないようなケースでは、安心できる専門業者にたのんだほうが間違いないでしょう。
役所への手続き、墓石の解体(墓じまい)、供養先の紹介など、安心して依頼することができます。
ただし、離檀料などのお寺との交渉については、弁護士法の関係で、弁護士に頼む必要がありますが、墓じまいの専門業者とよく相談することをおすすめします。
<非弁行為>
弁護士法では、弁護士の資格を持たずに、報酬を得る目的で、法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができないとしていますが、これに違反する行為を「非弁行為」と呼んでいます。
まとめ
お墓は、ご先祖を敬い、故人への祈りをささげることができる大切な場所です。
お墓は、単に故人を弔うだけの場所ではありません。毎月の墓参りでは、近況報告をしたり、家族を見守ってくれるよう願っています。
法事や命日に近しい親戚が集まることができるのも、お墓があり、そのお墓を守ってくれる寺があるからだと思っています。
もし、お墓がなかったら、心に一つ穴が空いてしまったような気持ちになるでしょう。
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