「墓じまい」は、寺との関係を無視してすすめることはできません。
つい、遺骨を移すための行政上の手続きや、現在の墓石の整理費用に気を取られ、寺と檀家という関係をおろそかにしがちです。
寺との関係がこじれると、墓じまいは難しくなります。墓じまいをするには、寺が発行してくれる「埋葬証明書」あるいは「埋蔵証明書」が必要になるからです。
墓じまいで檀家をやめる場合にはどうする?
同じ寺の墓地で、永代供養墓に移すために墓じまいをすることがあります。
私が檀家になっている寺にも永代供養墓があり、後継者がいなくことを心配した遺族が、これまでの墓を”墓じまい”して利用するケースが増えています。
墓地の管理費を払う必要はなくなりますが、この場合、引き続き檀家として寺との関係は続いていくことになります。
しかし、本人が亡くなれば、それ以降寺との関係を引き継ぐ遺族はいなくなります。いずれは、檀家としての寺との関係は消滅することになります。
この場合、自然に離檀(檀家をやめること)することになりますから、問題は起きません。
他の墓地(寺)へ改葬するための”離檀”で気を付けること
若い世代では、檀家制度そのものを知らない人も増えています。
昔は、寺が地域社会の中心にあって、今の役所の戸籍係のような役割を果たしていました。
どの寺にも、檀家の過去帳が保管され、寺の住職にお願いすれば、自分の先祖について、人間関係や人と成りまでも、かなりさかのぼって調べることもできたほどです。
それほど寺と檀家はとても密接な関係で結ばれていますから、”離檀”、つまり檀家でなくなることは、お互いに重要な問題といえます。
ですから、改葬のために墓じまいすることになったら、改葬理由を寺の住職にていねいに説明しなければいけません。
”改葬を拒否できないはず” と主張して、寺とトラブルになるケースを耳にしますが、とても残念です。
<ポイント>
檀家は、寺のご住職に、日常の墓の管理から故人の供養、葬儀や法要についての相談など、仏事に関することすべてを安心してお願いしているはず。このことを十分理解していれば、寺との関係はうまくいくはずです。
離檀は寺の経営にとって重要な問題
檀家が減ることは、寺の経営にとって重要な問題です。
地域社会での、寺の存在意義が昔とは変わってきていますから、この流れは止めることができないでしょう。
とはいえ、寺の経営を檀家制度にたよっているところが多いのは間違いありません。檀家からの収入にたよらず運営が維持できる寺は、ほんの一握りだと思います。
観光スポットとして有名な寺、不動産があり家賃あるいは地代収入がある寺、別に収益事業をやっている寺、など。
檀家を辞めてほしくないのが、寺の本音。それでも、ていねいに事情を説明すれば、気持ちよく”墓じまいによる離檀”に応じてくれると思います。
なかには、かなり高額な離檀料を請求されるケースもあるようですが。
《離檀料》
檀家をやめるときには、通常、離檀料の支払いが必要になります。金額は、5万円~20万円程度が多いようですが、法事などでのお布施料の相場も勘案した金額と考えておいたほうがいいでしょう。
永代供養墓も宗旨や檀家制度と無縁じゃない!
寺が運営する永代供養墓(合祀型)には、それまでの檀家だけでなく、別の宗教や信徒からの申込を積極的に受け付けているところが増えてきました。
永代供養を申し込む人は、独身者や子供など跡継ぎがいない夫婦が多いので、基本的に檀家になることを想定していません。
とはいえ、寺に故人の遺骨を納めてもらうことになるわけですから、その寺の宗旨や住職の考え方を理解し学んでおくことが必要です。
死んだ後のことを寺にすべて委ねるわけですから、納め場所さえ決まれば後は関係ないというのは、寺に対しても住職に対しても失礼にあたります。
”宗旨宗派問わず”となっているけれど
寺の墓地の募集で、”宗旨宗派問わず”となっているものを見かけますが、どんな宗教でもいいというわけではありません。
基本的には、仏教徒が対象です。
永代供養墓で住職がおこなう日々の供養は、あくまでその寺の宗派のやりになります。生前の宗旨がキリスト教やイスラム経などの場合には、寺院墓地ではなく霊園墓地のほうがいいでしょう。
墓じまいは専門業者からの情報収集も重要
お話したように、墓じまいは、檀家としての寺とのお付き合いをやめる離檀についても考えておく必要があります。
しかし離檀料について、これまでお世話になってきたお寺のご住職に直接聞くのは心情的に難しいかもしれません。
そんなときは、墓じまいの専門業者
私の場合、墓じまい以外の件で、寺のご住職からではなく、石材屋さんから情報をいただいたことがありました。まったく知らずに、寺へ直接墓じまいの相談をするより、気持のうえで安心できます。
別の寺院や霊園への改装についても、本音の情報を聞くことができますので、気軽に相談してみてはいかがでしょう。
コメント