2022年2月に亡くなられた石原慎太郎さんの海上散骨式が、生前からの希望どおりに、葉山の海でおこなわれました。
葉山ヨットクラブの名誉会長だった石原慎太郎さんは、同クラブが主催した散骨式で、30艇以上の船とクラブ仲間に見守られ、ご遺骨が海に撒かれましたようです。
海を愛し、ヨットに親しんできた石原慎太郎さんならではの海洋散骨ですが、近年、さまざまな事情から、散骨を希望する本人や遺族が増えています。
海洋散骨とは
海洋散骨(さんこつ)は、故人の遺灰を海洋に散骨する葬儀のことです。
船舶によって散骨が可能な海域まで移動し、遺族が散骨をおこないますが、故人の遺品やたくさんの花束などを投下するのは禁止されています。
遺族が船舶をチャーターして散骨をおこなうだけでなく、海洋散骨にはつぎのような方法もあります。
- 個別海洋散骨
・個別に船舶をチャーターします
・家族や親戚が乗船して散骨をおこないます - 合同海洋散骨
・複数の遺族が乗船して順番に散骨をおこないます
・費用を抑えて遺族が散骨をおこなうことができます - 委託海洋散骨
・散骨を専門業者に委託します
・乗船はできませんが費用を抑えることができます
海岸や砂浜で散骨をおこなうことは、禁止されています。また、漁場や養殖場の近くなども散骨することはできません。
散骨を選ぶ理由(メリット)
海洋散骨に限りませんが、つぎのような理由(メリット)から、散骨を選ぶ方が多いようです。
- 故人が自然に還ることを希望していた
- 大好きな海で眠りたい
- 故人に後継ぎがいない
- お墓などの費用がかからない
- お墓を持ちたくない
- お寺との付き合いが要らない
葬儀や墓石の費用など、その後の費用だけを考えて、海洋散骨を検討するケースも少なくありませんが、焼骨をそのまま故人が好きだった海岸や砂浜に撒くことはできません。
粉骨(パウダー状にする)してから散骨しますので、粉骨費用として3万円前後、船舶のチャーター費用などが必要です。
散骨の注意点(デメリット)
樹木葬などで散骨する場合も同様ですが、散骨してしまうと、二度と取り戻すことはできません。
散骨するときは、つぎのような点(デメリット)に注意する必要があります。
- 遺骨(遺灰)を取りもどすことができない
- 定まった祈りの場所がない
- 遺族の理解が得られないことがある
- 菩提寺(があれば)の了解が得られるか
海洋散骨は、故人の遺志でおこなわれることが多いですが、遺族から”祈りの場がなくなる”などのクレームがでることもあるようです。
海岸から散骨した海域へ向かって、手を合わせることもあるようですが、事件や事故と勘違いされるような振舞いは、近隣の方々にとって迷惑になるでしょう。
樹木葬では、周辺の景観が変わったり、シンボルツリーが冬になって葉を落とすと寂しくなるなど、散骨ならではの注意点もあります。
また、散骨場所が自宅から遠すぎると、訪れたい家族や遺族が訪れたいときに大きな負担になります。
すべて散骨せずに一部を分骨する
故人の希望とはいえ、遺族にとってすべての遺骨を散骨してしまうと、祈りの場が無くなってしまうような寂しさを感じることがあります。
このような場合、分骨して手元供養することについて、故人から事前に了解を得ておくと心のよりどころを失わずに済みます。
菩提寺があれば、事前にご住職に相談されたほうがよいでしょう。
海洋散骨はいつおこなうの?
海洋散骨の時期は、他の自然葬とおなじく明確に決まっているわけではありません。
葬儀が終わってすぐにおこなわれる場合もありますが、四十九日が過ぎてから、場合によっては数年後に実施するケースもあるようです。
後々トラブルが起きないように、事前に遺族間でしっかり納得したうえでおこなうためにも、海洋散骨の時期をあわてて決めないほうがいいでしょう。
海洋散骨の事業者選定と手続きについて
海洋散骨では、散骨してほしい海域だけでなく、合法的に散骨がおこなわれなければなりません。
さらに、散骨に参加する遺族の規模によっては、使用船舶も事業者選定のうえで重要です。海洋散骨では、つぎのようなポイントをチェックして事業者を選ぶと安心です。
- 海洋散骨での実績があるか
- 自社船舶を所有しているか
- 参列者全員が乗船できるか
- 希望する海域で散骨できるか
2012年から、貸切クルージングを専門として、海洋散骨などのセレモニーを運営する「海洋記念葬シーセレモニー」を参考に、具体的な手続きなどをみていきます。
「海洋記念葬シーセレモニー」について
「海洋記念葬シーセレモニー」は、2009年に設立された株式会社SPICE SERVE(東京都港区)が運営する海洋散骨事業で、TBS「サンデージャポン」でも特集されました。
「海洋記念葬シーセレモニー」の特徴は、つぎの通りです。
- ⾃社所有のクルーザーを中心に運営している
・多数の自社クルーザーと自社桟橋を所有し、最大70名まで対応できます。 - 国内以外にハワイでの散骨もできる
・おもに東京・横浜・湘南・⼤阪・沖縄・ハワイでの海洋散⾻を実施していますが、他の場所での散骨にも相談に応じてくれます。 - 専門のコンシェルジュがプランを作成する
・東京都港区のショールームでも打ち合わせをおこなうことができます。 - 保険に加入しているので安心して乗船できる
・「旅客保険」「旅行業保険」「事業活動包括保険」の3つの保険に加入しており、万が一の補償も安心です。 - 年忌法要クルーズを運航している
・「海洋記念葬シーセレモニー」では、年忌法要クルーズを運航していますから、散骨場所で故人に想いを馳せることができます。
「海洋記念葬シーセレモニー」手続きについて
「海洋記念葬シーセレモニー」では、つぎのような流れで海洋散骨をおこなっています。
- 打合せにより散骨プランを決定する
- 出港して海洋散骨をおこなう
- 花びらを献花して献酒をする
- 海域を周回して最後のお別れをする
- 「散骨証明書」が送付される
「海洋記念葬シーセレモニー」では、日本海洋散骨協会のガイドラインに則り、「散骨証明書」を発行しています。
海洋散骨をおこなう前に、遺骨を粉骨(粉にする)する必要がありますので、これについても事前に打ち合わせをおこないます。
「海洋記念葬シーセレモニー」プランについて
「海洋記念葬シーセレモニー」による海洋散骨では、おもにつぎのようなプランがあります。
- ファミリー散骨プラン
・料金:99,000円~(税込)
・貸切クルーザーで散骨をおこない、クルーザーの定員以内であれば、料金は変わりません。 - 代理散骨プラン
・料金:39,600円~(税込)
・「海洋記念葬シーセレモニー」のスタッフが、遺族にかわって散骨をおこないます。月1回のペースで散骨をおこなっています。 - 合同乗船散骨プラン
・料金:132,000円~(税込)
・大きい船舶に複数のグループが乗船して、順番に散骨をおこないます。月1回の実施ですが、大きな船舶を利用したい方にはおすすめです。
まとめ
海洋散骨では、一度散骨してしまうと、二度と取りもどすことができなくなります。
故人に跡継ぎがなければ、海洋散骨はトラブルになりませんが、故人の希望であったとしても、遺族にとってお祈りする場所が身近に無いことの寂しさが残ります。
菩提寺がある場合には、分骨を含め、ご住職と事前に打ち合わせをしておく必要があります。
ここでは「海洋記念葬シーセレモニー」による海洋散骨を紹介しましたが、法要などでふたたび散骨した場所を訪問できるように、しっかりした事業者を選ぶことをおすすめします。
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