1000万円の余裕資金を、将来に備えての運用するとしたら、基本的な考え方は2通りあります。
- 長期的に保有する
- 短期的に投資する
こまめに株価などをチェックできる環境にあれば、デイトレーダーのように短期的な売買を繰り返して稼ぐことができるかもしれませんが、まったくの素人には無理。
また、1000万円のなかから年金生活の不足分を補うのであれば、投資できる金額は限られ、せいぜい200万円~300万円程度でしょうか。
投資のHOWTO本はたくさんありますが、どんなに勉強しても成功する人はごく一部と考えたほうがいいでしょう。
年率2~3%の運用なら堅いと言われるけど・・・
また、2~3%程度の運用益を出すのは難しくない、投資しなければ目減りする、との意見もあります。
しかし、利回りを出しやすい投資環境は、株価の上昇トレンドが続いているここ10年ほどの話。
もうすこし長いスパン、20~30年でみると、状況は変わります。多くのプロ投資家が巨額の借金を背負った時期がありました。
バブルの崩壊です。50歳以上の投資家なら、このときの記憶がまだ残っているはず。
日経平均株価は、1989年12月29日 38,915円87銭の最高値をつけたあと、下降の一途をたどります。
途中2万円台前後で乱高下はあるものの、2003年4月28日 7,607円88銭に落ちるまで、13年4ヶ月かけて3万円以上も下がりました。
その後、2007年に1万8千円台まで戻したものの、2008年9月15日のリーマンショックで、その年の10月27日 7,162円90銭まで下落。一時的には、7,000円を割りました。
その後、2012年にアベノミクスがスタートし、株価は上昇基調に。日銀の株買い支えなどもあり、2019年12月27日 23,837円72銭まで回復しています。
直近10年では3倍以上の株価に!でも30年間で見たら・・・
リーマンショック直後から株式投資を始めた方は、運の良い人です。
株式を10年間持ち続けているだけで、1000万円の原資が3倍の3000万円ですから、年率12%を超えるペースになります。
しかし、直近の相場は、長い目で見れば、いいところだけを切り取ったような結果になっています。
30年間を振り返ると、山あり谷ありで、バブル崩壊前の1989年12月29日 38,915円87銭の最高値からすれば、まだ6割程度の回復。
バブル当時の投資家のなかには、すべての資産を失い破産した個人がかなりの数にのぼりました。
債務金額も半端ではありません。事業家であれば、その金額はケタ違い。
私が相談を受けた方は、さまざまな事業をおこなっていましたが、バブルの崩壊によって不動産事業で失敗し、数百億円もの負債を背負って倒産しました。
20年近く経ってから、別の事業で再起するときに相談を受け、現在は新規事業で活躍しています。
日本では、一度、倒産履歴が残ってしまうと実業家として復活するのは難しいのが実情。よほどのアピールポイントが無ければ、再起は困難です。
もし、これが老後の資産運用だったとしたら・・・。
運用資産がゼロになるだけで、負債を背負って倒産するわけではない、と思うかもしれませんが、年金の不足を補う資産だとしたら、債務が約束されたことになるわけです。
現役世代ならハイリスク・ハイリターンへの投資もできるが・・・
現役世代であれば、多少のリスクがあっても、一部をハイリスク・ハイリターンの株式や有価証券へ投資することも考えられます。
失敗しても、将来十分な収入が得られ、また貯めることもできる可能性があるからです。
貯蓄を積み上げていくことができる年代と、貯蓄を取り崩していく年代とでは、資産運用の考え方が根本的に違うので、注意が必要です。
政府は、2020年からの税制改正で、積立NISAの期限を2042年まで延長、確定拠出年金を加入期間を65歳まで延長するなど、老後への備えを推進する施策を積極的に打ち出しています。
このような施策を現役世代向けですが、根拠はつぎのような考え方にもとづいています。
リタイア後20年~30年間を視野にシミュレーション!
人生100年時代が現実になっていますが、定年延長で70歳まで働いたとして、その後30年間、ゆとりで暮らせる資金が手元にありますか?
年金だけでは生活できないのは当然ですが、定年までにどれだけ貯めておくことができるかがそのポイントであることは確かです。
ライフプランを作成するときに、シミュレーション通りの数字になるのは、平均月額17万円の年金収入ぐらいでしょうか。
支出のほうは、増える要素しかありません。
- 物価の上昇
- 消費増税
- 医療費の負担増
- 介護など
ゆとりある老後の生活をするには、月30万円といわれますが、この数字はあくまで今現在の話。
政府のインフレ目標が、年率2%ですから、もし実現すれば、今現在の1000万円は、10年後には819万円、20年後 673万円の価値に。
さらに、医療費や消費増税があれば、さらに金融資産を取り崩すペースは早まります。
年率2~3%の運用は当たり前?
直近の日経平均だけを見ていると、年率2~3%の運用は当り前のように思えてきます。
しかし、ライフプランを株価の上昇に合わせて、都合よく組み立てることはできません。
さらに、リタイアするまでに貯めた金融資産を切り崩して、毎月、生活費を補うとすれば、運用できる資金は加速度的に減少していくことになります。
となれば、高利回りでの資産運用は避けられないわけですが・・・。
分散投資は安全か?
投資手法として、分散投資が安全性が高く安定して運用できると言われます。
一部の金融商品でマイナスが出ても、全体的にはプラスになるのは、上昇局面ゆえの結果です。
もちろんマイナスのリスクをヘッジする方法もありますが、その分利回りは下がります。
株式投資では、資金の1/3~1/5程度を複数銘柄を買い、全部の合計額が一定のプラスを出せば全株を売却、もし下がればナンピン買い(※)するという人がいます。※価格が下がった株を買い増しすることで、平均単価を下げる方法
しかし、長期的に下降局面に入れば通用しない手法です。ナンピンする価格を設定しても、2~3回は耐えられますが、そこから先が続きません。
運用資産のなかから、生活資金を補充するとなれば、なおさらハイリスクの投資になります。
まとめ
投資マインドは、一度過熱するとなかなか冷やすことができません。
ネットなどの情報では、成功事例が圧倒的に多いので、投資しないと乗り遅れたような気分になってしまいます。
しかし、バブル崩壊以降、投資に失敗した多くの人(自分も含めてですが)に接してきた経験上、自身への戒めとしてこの記事を書きました。
もちろん、投資は止めていませんし、情報収集のため、ネット証券以外に複数の証券会社に口座がありますが、現在は静観。
バブル崩壊だけでなく、大きな下落要因はたくさんありますから、万一の場合、長引かないとも限りません。
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