「ヒト幹細胞培養液」は、「幹細胞」そのものではないから、それほど効果がないのでは?と思うかもしれません。
再生医療の分野でよく話題になるのは、「幹細胞」そのもの。「ヒト幹細胞培養液」は、美容液などのコスメに配合されるものと思っていましたが・・・。
ヒト幹細胞培養液を治療に使う研究が、名古屋大学大学院の研究グループによっておこなわれていますので、その成果を紹介します。
「ヒト幹細胞培養液」医療分野で成果!幹細胞でなくても・・
名古屋大学大学院の研究チームが、幹細胞培養液の効果を,最初に確認したのは、2012年のこと。
培養液を歯周病に投与することで、歯周組織が再生するのではないか、との仮説から始まった研究です。
「iPS細胞」「ES細胞」、幹細胞そのものを使った再生医療には、癌化などのリスクが懸念されています。
脂肪由来幹細胞を使った豊胸手術では、自分の幹細胞を使うため体への負担が少ないと言われていますが、過去にはシコリができる副作用も。
幹細胞培養液を使った医療にはリスクがほとんどない反面、効果も無いと思われるかもしれません。
しかし、その研究結果は意外なものでした。
幹細胞培養液で骨を再生
マイナビニュース2012.07.04には、以下のタイトルの記事が・・。
「名大、幹細胞を移植することなしに培養上清を用いて骨の再生にマウスで成功 」
記事は、つぎのような書き出しで始まっています。
名古屋大学(名大)は、幹細胞を移植することなく、その培養上清を用いて骨再生を行うことに成功したと発表した。・・
名大医学部附属病院では、「骨芽細胞」に分化させた培養骨を、歯科インプラントを埋め込むための骨が欠損している部位などに、この培養骨を移植してきたようです。
しかし、幹細胞の移植をおこなうためには、培養にかかる費用や人件費などのコストが膨大になるなど、治療する施設が限られてしまうとのこと。
そこで考えられたのが、幹細胞培養液が治療に使えないか、との発想ですが、その後の研究成果がマウスを使った実験で実証されています。
こちらが、NHKのニュース番組2017.01.25での動画ですが、研究がさらにすすんでいることがわかります。
幹細胞培養液の投与は副作用もない
NHKニュースによれば、名古屋大学の研究グループは、幹細胞培養液の副作用などについて、次のように説明しています。
あごの骨を失った患者に、ヒトの幹細胞培養後の培養液を投与する臨床研究を開始し、治療を受けた患者で再生期間が大幅短縮するだけでなく、副作用がない。
”幹細胞培養液に副作用がない”のは、ヒト幹細胞培養液の精製段階での厳格な管理により、幹細胞そのものの混入がないことにも起因しています。
さらに、名古屋大学研究グループ・上田実教授は、ヒト幹細胞培養液の投与により、移植した細胞が腫瘍になるかもしれないという危険性が完全になくなったとしています。
ヒト幹細胞培養液に含まれるサイトカイン
幹細胞は、移植によってその部位の細胞としてはたらくことができるだけでなく、幹細胞が分泌するさまざまな成長因子「サイトカイン」が組織の再生に重要な役割を果たしていることが知られています。
幹細胞培養液には、幹細胞を培養する過程で、細胞の再生に必要なサイトカインが分泌されています。
サイトカインの種類は、わかっているだけで数百種類ともいわれます。
VEGF、IGF-1、TGF-β1、HGFなど、スキンケアに敏感な方なら聞いたことがあると思いますが、これらがサイトカインです。
レセプターにはたらくヒト幹細胞培養液のサイトカイン
美容液などに配合される幹細胞培養液には、ヒト由来、動物由来、植物由来の3種類あります。
しかし、ヒトの細胞へのはたらきと安全性が確認できているのは、ヒト幹細胞培養液に含まれるサイトカインだけと考えたほうがいいかもしれません。
そもそも植物由来の幹細胞培養液には、動物特有のサイトカインとレセプターの仕組みがありません。
また、ブタなど動物由来の幹細胞培養液については、ヒトの細胞へのはたらきがあまりよくわかっていないこと、アレルギー反応などの可能性もあると言われています。
まとめ
幹細胞の医療分野への応用はじまったばかりですが、幹細胞培養液についても同じです。
しかし、名古屋大学の研究でもわかるように、幹細胞そのものの混入がなければ、ヒト幹細胞培養液が植物性や動物性のものと比べ安全性が高いと言えそうです。
ヒト幹細胞培養液は、厚生労働省が定める基準に準拠した厳しい管理体制のもとで精製されています。
幹細胞コスメで先行しているアメリカや韓国でも、副作用のトラブルについての事故例が見当たらないことからも心配する必要はなさそうです。
ただし、その効果については、年齢や皮膚の状態による個人差が大きいので、変化を感じるまでにはターンオーバーのサイクルを考えあわせる必要があります。
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