レオパレス21の問題は、単に建築基準法の問題というだけでなく、サブリースの問題にもかかわっています。
サブリースは、相続対策のための不動産の活用法として、不動産会社の営業戦略の柱になっていました。
地価の上昇は、相続に関していえば、かならずしも喜ばしいとは言えないでしょう。
オリンピックを目前に上昇する地価
オリンピックへ向けて、首都圏の不動産価格も年々上昇し、東京・板橋区あたりの地価もここ5年間で20%前後も上がっています。
不動産の実勢価格が不動産の相続税評価額になるわけではありませんが、土地の相続税評価の基準となる路線価にも影響するのは当然です。
一般の住宅ならまだしも、広い土地が空地のままになっていれば、相続税対策せずにそのまま放置するわけにはいきません。
そんな背景にマッチしたのがサブリースですが、はじめに土地の相続税評価額を下げるための方法について考えます。
アパートを建てれば相続税評価額が下がる
別にサブリースでなくても、賃貸アパートを建てれば土地の評価額を下げることができます。
これを貸家建付地の評価減と呼んでいますが、計算式は次のとおりです。
貸家建付地の価額 = 自用地とした場合の価額 - 自用地とした場合の価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合
ちょっと面倒な計算式ですが、「自用地とした場合の価額」というのは、路線価や倍率方式によって算出した価額になります。
借地権割合というのは、路線価図に記載されていて、A~G(90%~30%)に分類されています。東京・板橋区の住宅地では70%、商業地は80%のところが多いようです。
東京都の借家権割合は30%で一律ですから、計算例をあげれば次のようになります。
【例】
自用地としての価額:5000万円
借地権割合:70%
借家権割合:30% ※平成30年分
賃貸割合:100%
【計算式】
貸家建付地の価額=5000万円ー(5000万円×0.7×0.3×1.0)=3950万円
貸家建付地の価額は実勢価格より一般的に20%程度低いですから、実勢価額を6000万円とすれば、土地の評価を30%以上も下げることができます。
ただし、賃貸割合がポイントに・・・。
賃貸割合は空室率できまる
賃貸割合は、課税時期(相続であれば被相続人の死亡の日)の入居率のことです。空室が多ければ、その分土地の評価を下げることができません。
前項では、入居率100%として計算していますが、老朽化してくれば空室率が上がり、相続税対策の効果も薄れます。
※ただ、一時的に空室であった場合は賃貸していたものと解釈するなどの例外条件がありますから、実際の事例では専門家や役所への確認が必要です。
アパートを自分で管理するのは大変
アパートを自分で管理することができるなら、サブリースは必要ありません。
しかし、他人の自分の建物を貸すわけですから、さまざまなリスクが生じます。
●長期間の空室 ●クレーマー ●家賃の回収 ●自殺などの事件 ●建物のメンテナンス
どれも面倒なものばかりです。空室率は土地の評価額にも影響しますが、事件が起きればその空室率もさらにアップ!
管理面で一番振り回されるのが、クレーマー対策。
アパートを持つのも大変ですね。
サブリースなら空室ゼロで管理もおまかせ!
サブリースの場合、不動産会社が自分のところで建設したアパートを丸ごと一括で借り受けてくれますから、空室や家賃回収などの問題が解消されます。
不動産会社のキャッチコピーは「30年間家賃保証」と「空室保証」です。
不動産オーナーとしては、家賃収入が安定して見込め、管理面でのトラブルの心配もありませんから、いいことばかりのはずですが・・・。
下がっていく家賃収入
30年間家賃保証といっても、サブリース契約は数年ごとの契約更新、あるいは定期的な賃料改定が折り込まれています。
当初の賃料が、30年間保証されることはまずありません。入居率が悪くなれば、実勢に合わせて家賃を下げていきますから、当初の収支計画にズレがでてくることも・・・。
サブリースの家賃収入は、もともと相場より20%前後低いですから、老朽化による賃料引き下げが収支悪化に拍車をかけます。
サブリースは、仕組みとしてはけっして悪いと思いませんが、不動産業者の質によってオーナーの明暗が分かれるところです。
相続対策に関連する税制改正も頻繁です。今の税制では有効であったとしても、実際の相続のときに同じとは限りません。
しっかり、自分の考え方を固めておく必要がありそうです。
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