変形性膝(ひざ)関節症は、初期段階では歩くときに膝に痛みを感じる程度ですが、中期では階段の昇り降りも難しくなります。
変形性膝関節症の初期段階では、ヒアルロン酸注射で痛みがとれますが、痛みの原因を治すわけではないので、重症化してくると、だんだん効かなくなっていくようです。
PRP-FD注射は、従来からの保存療法である鎮痛薬やヒアルロン酸注射では効果が感じられなかった方など、つぎのような方に試していただきたい治療法の一つです。
- 歩くときに膝が痛い
- ヒアルロン酸注射を何度も打っている
- グルコサミンを毎日飲んでいる
変形性膝関節症は高齢者特有の症状と思われがちですが、40歳以上で膝の痛みに悩む方は、全国で推定800万人もいると言われます。そのような悩みを抱える方のほとんどが、変形性膝関節症とのこと。
PRP-FD注射は、プロ野球の大谷翔平投手や田中将大投手が受けて話題になったPRP注射の成分をさらに濃縮したものを使う治療法です。
ヒアルロン酸注射との違いについても、あわせて確認していきます。
PRP-FD注射とは
PRP注射は、手術の必要がないので、スポーツ選手がケガの治療に使われ、野球の大谷翔平投手や田中将大投手が受けて話題になりました。
PRPとは、血小板を豊富に含む部分を血液から抽出したもので、多血小板血漿(たけっしょうばんけっしょう)のことです。
PRPには、皮膚の傷口を止血し修復するはたらきがあり、ひざの治療でも、痛みを和らげ、膝の機能を改善させたりする効果があります。
PRP-FD注射は、PRPをさらに濃縮して使う治療法で、変形性膝関節症への効果と高い持続性が期待できます。
『ひざ関節症クリニック』は、PRP-FD注射の実績が9,300例(※グループ計:2015年~2021年8月)にのぼりますが、治療後1年以上に渡って効果が持続しているケースも多く確認しているようです。
同クリニックのPRP注射のフローは下図のようになります。
実際のPRP-FD注射のフローは、『ひざ関節症クリニック』ではつぎのようになっています。
- 採血
・50mLほど採血します。 - PRP-FD精製
・PRP-FDの精製に約3週間かかります。 - 注入
・PRP-FDを膝関節内に注入します。
PRP-FD注射が特に効力を発揮するとされているのが、関節内に痛みがある疾患とのこと。『ひざ関節症クリニック』では、変形性膝関節症や半月板損傷への適応が良いとしています。膝のつぎのような部位に効果があるようです。
PRPの血小板に含まれる成長因子
PRPの血小板には、グロースファクター(成長因子)と呼ばれる物質を作り出す働きがあります。
※ひざ関節症クリニックHPから引用
TGFやEGFなどのグロースファクター(成長因子)には、炎症や痛みを和らげたり、傷の修復を促進するはたらきがあります。
PRP-FDは、PRPを濃縮したグロースファクター(成長因子)を使いますから、期待できる効果も大きくなります。
グロースファクター(成長因子)には、炎症や痛みを和らげたり、傷の修復を促進する以外にも、コラーゲンを作るものもあります。コラーゲンは、皮膚、骨や軟骨、靭帯、筋肉などを形成しているので、関節内の修復にも役立つと考えられています。
PRP-FD注射の費用と保険適用について
PRP-FD注射は、ヒアルロン酸注射と比べ費用が高くなりますが、治療回数が少ないこと、効果が長く持続することを考えると、メリットはかなり大きいと考えられます。
『ひざ関節症クリニック』の料金表によれば、PRP-FD注射の初回トライアルが、165,000円(税込)となっています。
PRP-FD注射は、自由診療になので健康保険は適用になりませんが、事前におこなうMRI検査は保険適用になるようです。なお医療費控除制度については、適応される場合があります。
ヒアルロン酸注射のメリット・デメリット
膝関節の痛みが出始める変形性膝関節症の初期段階では、ヒアルロン酸注射が試されることが多いのですね。
変形性膝関節症に対するヒアルロン酸注射のメリット・デメリットを簡単にまとめると、つぎのようになります。
<ヒアルロン酸注射のメリット>
- 初期段階で高い効果が期待できる
- 保険適用なので手頃な費用で受けられる
- 診察当日に受けることができる
<ヒアルロン酸注射のデメリット>
- 継続的な効果が得られない
- 頻繁な通院が必要になる
・週に1回を3〜5週間継続する
・その後効果に応じて2〜4週に1回投与 - 重症化すると効果を得にくい
ヒアルロン酸注射は、診察当日にすぐ受けることができて、保険が適用されますから、心理的にも経済的にも負担が少ない治療法です。
ヒアルロン酸注射には、軟骨を保護したりや関節を潤滑にする効果があり、変形性膝関節症の初期段階では高い効果が期待できます。しかし、痛みの原因を治療するわけではありませんから、繰り返しの投与が必要になり、重症化すると効果を得にくくなります。
変形性膝関節症に対するヒアルロン酸注射の効果は、つぎのようなイメージになります。
痛みを抑える効果を持続するためには、週1回からはじまり頻繁な通院が必要になりますから、仕事やライフスタイルによっては負担になるかもしれません。
変形性膝関節症の末期には使えないPRP-FD注射
PRP-FD注射は、変形性膝関節症に効果的な治療法ですが、末期の症状に対しては、残念ながらむいていないようです。できるだけ早い段階での治療が望まれます。
変形性膝関節症の末期では、人工関節の手術を受けるのがベストということになるようです。
できるだけ体にメスを入れたくない最新の治療技術として、培養幹細胞を使った再生医療による治療法「培養幹細胞治療」があります。
「培養幹細胞治療」は、患者から採取した脂肪の幹細胞を培養し、培養した幹細胞を注入する治療法で、かなりの効果が認められているようです。
「培養幹細胞治療」について、『ひざ関節症クリニック』のグループ全体では、4,900症例(2015年3月~2021年7月)がおこなわれておりますが、「培養幹細胞治療」を用いたとしても、重症化した変形性膝関節症の末期にはあまり効果が望めないようです。
まとめ
変形性膝関節症は、そのままほおっておいても良くなることはありません。
ヒアルロン酸注射は、初期段階では効果的ですが、継続的に受け続けなければなりませんから、結果として経済的とは言えないかもしれません。
PRP-FD注射は、ヒアルロン酸注射とくらべると効果が持続しますが、悪化しすぎた変形性膝関節症ではその効果が期待薄。
普通に歩けなくなるほどの末期になれば、人工関節が必要になりますが、入院やリハビリに長期間を要しますし、なによりも体にメスを入れることは心身ともに大きな負担です。
ここでは『ひざ関節症クリニック』でのPRP-FD注射、培養幹細胞治療について触れましたが、クリニックでの治療に不安を感じる方は、まずはセルフケアの整体を試してみると良いかもしれません。
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