超一等地の高級住宅地にも、売り物件の看板が立つようになったようです。
自宅を売りに出していることは、あまり近所に知られたくないものですが、売却しなければならない事情があるようです。
2019年9月20日に告示された東京都の基準地価では、都内23区は軒並み上昇。
都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)では平均5.2%、その他区部4.5%で、前年と比べて大きく上昇しています。
しかし、東京の高級住宅地である田園調布をみると、基準地価と実勢価格にはかなりの差があるようです。
基準地価が上がっても売れない高級住宅地
東京では、高級住宅地・田園調布に住むことがステータスだった時代がありました。
政財界人はもちろん、有名スポーツ選手が住むこの土地に、最近目立ってきたのが、不動産売却の看板だそうです。
マネー研究所「NQNセレクション」の記事によれば、田園調布のなかでもっとも格が高いといわれる3丁目に、2018年ぐらいから看板が目立ちは始めたとのこと。
特に、3丁目には、2億円から9億円の売り物件が点在しているようです。
高級住宅地での成約価格の下落
不動産売買で基準となる地価には、地価公示価格、基準地価、路線価などがありますが、実際に取引されるときの成約価格も、これらの動きに連動するのが一般的。
しかし、田園調布の3丁目では、基準地価の値動きに反して、成約価格が下降線をたどっているようです。
2018年春から夏にかけて、坪単価400万円台だった成約価格が、2019年には、200万円台後半まで下落したとのこと。
田園調布3丁目の公示地価を決める標準地の2019年度の1坪当りの価格は347万1074円で、前年比3.96%アップ。
この公示地価を知ったら、とても200万円台で売る気にはならないでしょう。
実勢価格とは違う実態が見えてきますが、公示地価などの評価に、不動産業界の事情があることも否めません。
全国の状況をみても、評価する標準地が毎年変わらないために、地域の実勢価格との開きがかなり出ているところもあります。
宮古島の土地価格の実態について、こちらの記事で書いていますので、参考にしてください。
高級住宅地の売却が難しい三者の事情
不動産の成約価格は、売り手と買い手の希望だけでなく、それを仲介する不動産業者の相場感も重要なポイントです。
使い勝手がよい土地なら、需要も増えますが・・・。
都市計画法では、田園調布の用途地域は「一種住専」で、建物も用途、土地面積に対する建築面積(建ぺい率)、延床面積(容積率)、建物の高さなどに制限があります。
第一種低層住居専用地域、準防火地域、市街化区域 建ぺい率 40% 容積率 80% 高さ10m
田園調布の場合、さらに、自治体が定めた「田園調布憲章」によって、最低面積が50坪(165㎡)以上などの厳しい制限があって、町の景観を守っています。
不動産の価格は、需要と供給のバランスで決まります。
マンションに建て替える、商業施設を建設する、数戸にわけて分譲する、などのニーズにこたえることができれば、超一等地ですから購入希望者は多いはずです。
しかし、低層の住宅しか建てることが出来ないとなれば、不動産業者や法人としては魅力的な不動産とは言えないでしょう。
購入者層としては、事業に成功し、田園調布に住むことをステータスと感じる個人に絞られるでしょう。
土地所有者からすれば、公示地価などが頭にあれば、急激に下がった実勢価格に納得できるはずはありません。
また、安易な売却価格の引き下げは、近隣相場を下げることにもなりますから、不動産業者としても慎重です。
不動産を売るきっかけは?
田園調布で、売り物件が増えた理由の一つに、高齢化によって”家族構成”が変わってきたことが挙げられています。
15年の国勢調査によれば、田園調布の3丁目の世帯に占める、65歳以上の家族がいる世帯比率は、約49%。
子供が独立し、夫婦2人、あるいは一人になってしまい、都心の便利なマンションへ住み替えがすすんでいるようです。
経済的には、かなり余裕がある世帯が多いはずです。”売却物件”の看板が増えているのは、慌てて売却する必要がないから?
あわてて不動産を売却する前に相場感を持っておく
不動産の売買を経験することは、一般的には、それほどないはずです。
しかし、不動産を売却しなければならない事情が、ある日突然やってくることも少なくありません。
今日明日ということはありませんが、リストラによる早期退職や勤務先の倒産、家族の債務など、不動産を売却しなければならないケースは少なくありません。
いざ不動産を売却となれば、半年ぐらいは覚悟しておいたほうがいいでしょう。売り急げば、足元を見られます。
その差額は、数百万円から、物件によっては1千万円以上になることも。
公示地価や基準地価、そして実勢価格をチェックしておけば、いざというときにも慌てずにすみます。
また、不動産の買い替えなどでは、税金の特例などについてもしっかりチェックしておいたほうがいいでしょう。
こちらの記事を、参考にしてください。取引関係者全員が誤解していた実例です。
まとめ
先祖代々引き継いできた土地家屋、住宅ローンで取得したマイホーム、投資目的のマンションなど、所有しているキッカケはさまざまです。
しかし、いずれはどこかで手放さなければならないのが不動産、と考えていたほうがいいでしょう。
老人ホームへの入居、老後資金の確保、マンションへの住み替え、相続発生による資金化、固定資産税の負担軽減などの理由で、不動産を売却するケースは、今後さらに増えます。
また、以前のように、基準地価が上がっても、実際に自分の土地が去年より高く売却できるとは限りません。
不動産の売却で、いざというときに慌てないためには、事前の準備が大切です。
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