不動産を子供に相続させるか、売却して自分の老後資金にするか、迷うところです。
”家”に対する考え方・価値観の違いによって、その方針が変わりますから正解はありません。
しかし、早目にその方向性を決めておかないと、自分自身のライフスタイルだけでなく、家族の生活設計にもかかわってきますから、早目に検討しておいたほうがいいかもしれません。
不動産を子供に継がせる?それとも老後資金?
あり余る不動産があれば、相続だけを考えればいいでしょう。
しかし、よほどの資産家でない限り、土地の一部または全部を売却しなければ、相続税を払うのが難しいことも。
かつては、代々引き継いできた家を後世に残すことが、家主の務めでしたが、サラリーマンとして立派な家屋敷を維持していくのは、とても難しい時代になりました。
かつては、外からは母屋が見えないほどの敷地だったのに、気がついたら更地になっていて・・・。
再開発で何十棟もの建売住宅が建てられ、もとの状態が思いだせないことも。
母屋が残せれば良い?
たとえ、残された金融資産で相続税を払い、不動産を相続できたとしても、固定資産税の負担が大変!
サラリーマンには負担が大きい固定資産税!リタイアしたらさらに・・
都心の一等地や高級住宅地に住むことは、ステータスです。
実業家であれば、事業と一緒に不動産もそのまま子供に引き継がせることもできるでしょう。
しかし、普通のサラリーマンにとって、一等地に住み続けることは、固定資産税を払うために働いているようなものかもしれません。
高級住宅地の一角にマイホームを建てたとして、簡単に固定資産税をシミュレーションしてみます。
60坪(200㎡)の土地に、36坪(120㎡)の家。ちょっと狭いですが、計算の都合上なので我慢してください。
地域による税率の違いや調整値などは無視していますので、参考まで。
〇土地面積:200㎡ 路線価:30万円/㎡
〇固定資産評価額:6000万円
〇建物評価額:1000万円 ※床面積:120㎡
〇固定資産税:1.7%(固定資産税1.4%+都市計画税0.3%)
※実際には、「①固定資産税」と「②都市計画税」を別々に計算します。
1.土地の固定資産税の計算
①「固定資産税」の計算
200(㎡)×30万円×1/6(※)=1000万円
※小規模住宅用地の軽減割合:1/6
1000万円×1.4%=14万円
②「都市計画税」の計算
200(㎡)×30万円×1/3(※)=2000万円
※小規模住宅用地の軽減額:1/3
2000万円×0.3%=6万円
6万円-3万円(※)=3万円
※都市計画税の軽減額(1/2)を控除しています。
③土地の固定資産税
①+②=17万円
2.建物の固定資産税の計算
①「固定資産税」の計算
1000万円×1.4%=14万円
②「都市計画税」の計算
1000万円×0.3%=3万円
③建物の固定資産税
①+②=17万円
固定資産税(土地17万円+建物17万円)=34万円
広い土地や事業用地では小規模宅地の特例が使えない!
計算例では、小規模宅地の特例(200㎡以下)が適用されるので、課税標準額を大きく減額できます。
しかし、土地について、200㎡を超える部分は、「固定資産税」1/3、「都市計画税」2/3が適用されますから、税額もかなり大きくなります。
また、建物についても、120㎡を超える部分については減額されません。
実際に、高級住宅地に床面積120㎡以下の住宅を建てることは少ないと思いますから、固定資産税も一気にはね上がるでしょう。
また、事業用不動産については、住宅についての軽減措置がありませんから、税負担はさらに大きくなります。
家を取り壊したら?
家を取り壊したら、建物に対する課税は無くなりますが、土地については、軽減措置の対象外に。
固定資産税評価額は、一気に何倍にもなりますから、ますます税負担が重く。
空き家が放置されているのは、解体費用がかかるだけでなく、固定資産税対策が一因かもしれません。
年金生活者には負担が大きい固定資産税
現役世代なら、数十万円の固定資産税を払いつづけることができるかもしれませんが、年金生活者にとっては大きな負担です。
さらに、建物が古くなれば、定期的なメンテナンスが必要に。
80歳ぐらいまでは、リタイアするまでに貯めた貯蓄でやりくりできても、90歳、100歳となると、自分自身の健康状態にも不安が。
初めのうちは、それほど負担に感じなかった固定資産税が重荷に。
不動産の有効活用法を考えておく
駅近や交通の便が良い場所、文教地区や人気のエリアなら、アパートやマンション経営について検討するのも、一つの方法です。
他にも活用法はありますが、立地や所有者の考え方によって、やり方はいろいろあります。
アパート・マンション経営
相続対策としても有効なアパ―ト・マンション経営ですが、今後の税制改正によっては、効果が薄くなる可能性も。
また、築年数による建物のメンテナンス費用を、貯めておく必要があることにも注意!
民泊
空いているスペース(部屋)を民泊として貸し出すのも、いいかもしれませんが、採算が合うかどうかは、運営方法次第。
東京・四谷では、オリンピック期間中・1泊100万円という部屋がニュースになりましたが、これは期間限定の例外。
競争の激しいエリアでは、料金相場が下降気味。1泊2000円?
民泊新法により、登録事業者が急増するなかで、廃業する人も。
自宅の空き部屋を貸し出すとなると、外部業者へまかせるわけにもいきませんし、自分の生活空間との境目が。
インバウンド需要が多いので、言葉の壁やエチケット・マナーにも気をつかいます。さらに集客のためには、設備投資も必要に。
外国人とのコミュニケーションを”生きがい”にしたい方にはおすすめです。
駐車場シェアリング
駐車場の空きスペースがあれば、駐車場シェアリングがおすすめです。
家族で車を1台づつ所有していた、そんな方も多いと思いますが、子供が独立したり、車を手放す人も。
空き駐車スペースをシェアリングサービスで貸し出すメリットは、設備投資が不要で、いつからでも簡単に貸し出すことが出きること。
”それほど収入にならないんじゃ・・・”という方もいますが、住宅地でも1~2万円(月)に。駅や繁華街の近く、大型施設の周辺なら、5~10万円になることも。
住宅地では、学校の行事や実家への帰省などでのニーズがあるようです。
月1~2万円でも、固定資産税の負担を考えたら、かなり大きな副収入です。
リバースモーゲージ
リバースモーゲージは、自宅の不動産を担保に、金融機関から生活資金を受け取りつづける仕組みです。
自宅にそのまま住み続けることができるのが、メリットですが。
長生きするほど、金融機関からの借入額が増えるので、物件の価値が下がると担保割れするリスクも。
不動産の担保掛目は、50~70%程度。
長生きを担保するはずのリバースモーゲージが、不動産価格の騰落で一喜一憂するのでは、ちょっと不安。
国内で導入されてから15年以上も経つのに、なかなか定着せず、制度の運用を廃止した自治体もあると聞きました。
一方で、リバースモーゲージ型住宅ローン「リ・バース60」のように、保険と組み合わせ、さまざまな資金の使い道に対応できることで、利用実績が急増しているところもあります。
リバースモーゲージを利用するのであれば、売却も視野にいれて、所有不動産の価値を事前に知っておいたほうがいいかもしれません。
家族構成に合わせダウンサイジングして、別の場所に移る方法も。
まとめ
不動産を手放したくない気持ちはあっても、固定資産税や相続税の負担を考えると、最終的には売却を視野にいれておかなければなりません。
単純にモノとして考えられないのが不動産ですが、持ちこたえられなくなって手放すときには、後に何も残らないことが少なくありません。
リバースモーゲージも、基本的には、最後に不動産を手放すことを前提としています。担保評価の掛目も、50~70%程度。
であれば、はじめから売却してしまったほうが良い?
どれを選択するにしても、今住んでいる家の評価、こまめにやっておいた方がいいのは間違いありません。
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