大阪大学の研究チームが、2020年1月27日、iPS細胞から作成した心筋細胞を、心筋症の重症患者への移植手術をおこないました。
iPS細胞は、さまざまな組織の細胞へ分化できる万能細胞として、これからの再生医療への応用が期待されています。
しかし、iPS細胞の移植が簡単ではないのは、腫瘍化(ガン化)などのリスクがあるためで、記者会見の席上でも、慎重に経過観察していくとの発表をしています。
一方、スキンケアなどの化粧品には、iPS細胞などの幹細胞は使われていませんが、以前は「幹細胞コスメ」と呼ばれていました。
正確に言えば、コスメに配合されているのは、幹細胞を増殖させるときに使われる培養液です。
幹細胞培養液の安全性と効果については、名古屋大学の研究チームが、実験で検証していますので、以下の記事を参考にしてください。
この幹細胞培養液には、数百種類ともいわれるサイトカイン(cytokine)など、細胞の増殖や活性化に必要な多くの成分が含まれています。
スキンケアにおいても、幹細胞培養液に含まれるこれらの成分が、幹細胞そのものと同じような効果を発揮すると考えられますが、心配する声があるのは確かです。
ヒト幹細胞培養液に含まれる肌にはたらく有用成分
幹細胞が分泌する成分には、サイトカインなどのタンパク質成分が豊富に含まれています。
美容ではよく知られる増殖因子(グロースファクター)「EGF」「FGF」「PDGF」「IGF」なども、サイトカインの一種。
細胞の受容体(レセプター)にはたらいて、細胞の増殖や活性をうながします。
コスメに配合されるヒト幹細胞培養液には、解明されていない多くのグロースファクター(GF)が含まれていますが、このうち「EGF」と「FGF」について調べました。
EGF(上皮成長因子)
EGF(Epidermal Growth Factor)は、細胞の成長と増殖にはたらき、表皮細胞の分裂を活性化することで、皮膚のターンオーバーを促進します。
年齢肌にEGF を補うことで、ターンオーバーが正常化され、シミ・くすみ・乾燥・毛穴などの肌トラブルの改善につながります。
FGF(線維芽細胞増殖因子)
FGF(Fibroblast growth factors)は、線維芽細胞の増殖因子として、血管の生成や傷の修復、胚発生にはたらきます。
FGFは、細胞の定着率を向上させる物質として、再生医療の現場では欠かすことができない薬になっています。
おおきなメリットは、細胞の定着率が向上するので、少ない細胞でも治療ができるようです。
再生医療の現場でも使われているFGFの副作用は?
FGFを再生医療に使うことについて、発ガン作用を心配する声も一時ありましたが、現在では、ガンを作る能力については否定されています。
ガンを作る能力があれば、治療薬として認められることはありません。
FGFは、京都府立医大での心筋再生や、京都大学での大腿骨頭壊死に対する再生医療でも使われ、皮膚再生医療の現場でも頻繁に使われているようです。
肌の再生医療を専門におこなっているクリニックのケースでは、8年間で1万件以上の治療をおこなっていますが、長期間永続する「しこり」や「膨らみ」などの変形(副作用)は1 例も発生していないとのことです。
線維芽細胞の働きがスキンケアのポイント
線維芽細胞は、三大美容成分「コラーゲン」「ヒアルロン酸」「エラスチン」を作り出して、肌のハリやツヤをささえています。
線維芽細胞の働きは、年齢とともに衰えていきますから、線維芽細胞の活性化はスキンケアの重要なポイントになります。
真皮層にある線維芽細胞は、肌の外側からのケアでは十分ではありません。効果的なのは、体の内側から線維芽細胞にはたらく成分を摂ること。
年齢とともに、ターンオーバーのサイクルが長くなりますから、その効果が現れるまでに時間がかかります。
そのため、スキンケアは、線維芽細胞が元気なうちから早めたほうが効果的です。
線維芽細胞へのはたらきがあるFGFなどのサイトカインを多く含んでいる「ヒト幹細胞培養液」コスメは、試す価値がある美容アイテムと言えるでしょう。
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