テストステロンは、男性ホルモンの代名詞とも言えますが、性ホルモンとしての認識が強いようです。
しかし、テストステロンが減少すると、筋肉の衰えによってお腹の脂肪が増え、メタボリックシンドロームのリスクが増加、さらには骨密度が減るため骨粗しょう症を引き起こす可能性も。
文藝春秋2019.11月号に、冒険家・三浦雄一郎さんが男性ホルモン注射を受けたことで体力が回復し、80歳のときにエベレスト登頂に成功したとの記事が載りました。
高齢になってから、男性ホルモンを増やそうとすることについては、抵抗がある方も少なくないはずです。
「テストステロン」イコール”精力・性欲回復”のための男性ホルモンのように思われますが、健康で楽しいライフスタイルを実現するためには、必須のホルモンのようです。
とはいえ、高齢になってから突然、”男性ホルモン注射”なんて言い出したら、”あなた、なに考えてんの!”なんて言われそう。代替案は?
男性ホルモンがエベレスト登頂のカギ?三浦雄一郎を支えた「テストステロン」
冒険家・三浦雄一郎さんは、2013年5月23日、80歳という最高齢でエベレスト登頂に成功しました。
若い時から、富士山からの直滑降、エベレストからのスキー滑降など、数々の冒険を続けてきた三浦雄一郎さんのことですから、”成功しても不思議じゃない”ぐらいの思いがありました。
しかし、実際には、エベレスト登頂プロジェクトの2年前に大事故に遭い、医者からは”車椅子生活”を宣告されていたそうです。
スキーのジャンプに失敗して、左大腿骨頸部、右骨盤、恥骨を骨折、三浦さん自身、”腰がぐちゃっと割れる音がした”と語っています。
この状況から、わずか2年で回復したキッカケになったのが、医師からすすめられた男性ホルモン注射でした。
『LOH症候群』男性ホルモン「テストステロン」の減少が原因
男性ホルモン「テストステロン」の分泌量は、20代前半をピークに年々減少していき、それにつれて筋肉が衰えることでメタボになりやすい体質へ変化します。
血中のコレステロール値が上がって、高血圧や高血糖となり、動脈硬化に。さらに骨密度の減少によって骨粗しょう症になれば、物忘れや気力の低下、うつの症状や睡眠障害などの原因にもなり、性欲低下だけにとどまりません。
これらの不快な症状は、医学的に「加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)」と呼ばれています。
さらには、米国での研究によれば、血中のテストステロンの濃度が低いと死亡率が5倍も高くなるとの報告もあるようです。
男性更年期のチェックシート
文藝春秋には、フランス人医師・クロード・ショーシャ氏が作成した以下の「男の老化度テスト」が掲載されています。
<「男の老化度」チェックリスト>
- ここ近年お腹が出てきましたか?
- 性欲や勃起力は衰えてきましたか?
- 夕食に眠くなりますか?
- 特に理由もなくイライラしたり、不安感やもの悲しさを感じたりしますか?
- 体力は低下していますか?筋肉は衰えてきましたか?
- 夜中にトイレに行く回数が増えましたか?
- 昼間や仕事中に疲れやすいですか?
- ここ近年胸が大きくなりましたか?
- 髪が薄くなってきたと感じるようになりましたか?
- 最近顔色が悪くなってきましたか?
※クロード・ショーシャ博士、クロード・デール博士:共著、和田秀樹:監訳・監修、「最強の男性ホルモン「テストステロン」の秘密」(ブックマン社)より
高齢者「定期健診」の問診票に似ていますが、ショーシャ医師が自著「最強の男性ホルモン「テストステロン」の秘密」のなかで紹介しているもので、判定基準は次のようになっています。
3~5個 | 男性更年期が始まっている可能性が高い |
6以上 | 確実に男性更年期 |
お腹が出て、体力が低下、仕事で疲れやすい、この3項目は、ほぼ全員に共通?
テストステロン補充療法
初めに、以下の検査をおこないます。
- カウンセリング
- 加齢男性スケール(AMS調査票)
- 血液検査
治療の対象となるのは、血液1ml中、テストステロン値がおおむね300~320ナノグラム以下の場合、LOH症候群と診断され、治療の対象になるようです。
注射剤の他に、錠剤、クリーム剤があるようですが、日本で保険適用になるのは、注射剤(テストステロンエナント酸エステル)のみのようです。1週間に1度、3ヶ月程度注射して効果を見ます。
テストステロン補充療法の副作用
テストステロン補充療法では、決められた用量を守っていれば、副作用の心配はほとんどいらないとのこと。
しかし、前立腺がんの場合、テストステロンが進行させてしまうリスクがありますから要注意!
前立腺がんの腫瘍マーカーが、一定の数値以上の場合には適用しない、あるいは中止するとのことですが、心配する必要は無いとの意見もあるようです。
ときには、脳梗塞を引き起こしたり、肝臓に負担をかけることも。睡眠時無呼吸症候群の人は、病状が悪化するリスクもあるそうですから、しっかり検査を受けて治療を受けたほうがよさそうです。
若さを維持するなら40代から?
ショーシャ医師は、”若さを維持したいなら、40代から補充療法を受けるべき”と主張していますが、趣旨はメタボを気にして食べるものを減らすより、食べても太らない体にもどすのが目的のようです。
文藝春秋の記事中でコメントを寄せている60歳前の医師は、40代後半から「ホルモン補充療法」と「アンチエイジング」のサプリメントを併用し、あれからあまり年をとらなくなったと語っています。
テストステロン療法の費用は?
テストステロン療法は、女性でも、”やる気がでない”人に打つと、仕事などでやる気がでるようですが、アンチエイジング目的や女性の場合、保険対象とならないので、自費診療になります。
記事中で紹介されているクリニックでの料金は、次のようになっています。
- ホルモン検査
初診時:8万円
※ショーシャ方式検査:18万円 - テストステロンの錠剤(40mg)
1ヶ月:約2万円/1日2錠 - 塗り薬
1ヶ月:1~2万円 - 注射
3ヶ月に1回:9万円
合計すると、初診を除いて1ヶ月平均6~7万円ぐらいですが、自由診療の場合かなりの金額になります。
テストステロンの飲み薬やクリームは通販でも入手できるが・・・
テストステロン療法の費用は、高額で継続的におこなう必要があります。
通販でも、飲み薬やクリームを入手することができますが、副作用のリスクも少なくありませんから、医師と相談してから使用したほうがいいでしょう。
治療以外で、テストステロン値をあげることができればいいのですが・・・。
テストステロン値を上げる方法は無い?
文藝春秋の記事中、普段の生活のなかで、テストステロン値を上げる方法がいくつか紹介されています。
- 運動をする
・筋肉が刺激されることでテストステロン値が上がります。ただし、高齢者のやりすぎは禁物。やり過ぎると逆に数値が下がってしまうそうです。 - 異性と関わる
・直接的な性交渉やスキンシップでなくても、スナックなどで女性と話すだけでも効果がありそうです。ただし、奥さんと話すだけでは駄目とのこと。手をつなぐ、腕を組むなど、普段と違うことをするのがポイント! - 仲間と行動する
・利害関係のないところで競争することが、テストステロンを増やすそうです。運動するなら、野球やサッカーなどのチームプレーがいいとのこと。 - 肉を食べる
・日本人が食べる肉の量は、1日平均80g、欧米人の300gと比べると、かなり量が少ないですが、これも日本人がテストステロン量の減少が早い理由になっているそうです。 - 十分な睡眠をとる
・テストステロンは夜作られるため、睡眠不足だと充分に作られなくなるそうです。5時間睡眠だと、10時間睡眠や8時間睡眠と比べて、テストステロンの量が10~15%も減少した、とのシカゴ大学の実験結果も。
サプリメントを活用する
テストステロン療法とくらべると間接的ですが、男性用サプリメントをためしてみるのもおすすめです。
記事のはじめに紹介した三浦雄一郎さんの場合、エベレスト登頂前の治療では、男性ホルモン注射と一緒にED治療薬を処方され、体力維持・体調管理をしています。
また、自身がテストステロン療法を施術している60歳前の医師も、アンチエイジングのサプリメントを同時に摂っているようです。
まとめ
年齢とともに体力・気力が落ちていきますが、男性ホルモン「テストステロン」の影響も大きいようです。
ホルモン注射に頼る前に、やれることはいろいろあります。
若いうちから男性ホルモンの分泌量を減らさない生活習慣を心がければ、高齢になってから後悔しないでもすみそうです。
やはり、異性との関わりは元気の源であることは間違いありませんが、体力がともなっていないと気持ちも消極的に・・・。
まずは、異性との出会いが大切です。そして、サプリメントはそんなときに、前向きな気持ちを支えてくれるに違いありません。
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