年齢とともに、朝起きる時間が早くなります。
まだ薄暗いうちに目が覚めてしまい、二度寝ができないまま、うとうとしながらそのまま起床時刻になるのを布団の中で待つ人も。
日が昇る前から、散歩をする人もいます。早朝の公園、気持ちがいいですが、早起きがかならずしも健康に良いとは限らないようです。
高齢になると、深い睡眠がとれずに、朝早く目が覚めることがあるので注意が必要です。
中高年からの早起きは睡眠不足が原因かも
年齢が高くなるほど、睡眠時間が長くなるという統計がある一方で、「睡眠が十分とれていない」と感じる高齢者の割合が増えていきます。
下図は、厚生労働省の2017年度「国民健康・栄養調査」で、睡眠の状況についておこなったアンケート調査の結果です。
調査結果に使われている図をそのまま引用したので、数字などがはっきり見えませんが、直感的に感じていただきたいと思います。
中央の一番高いところが、40~49歳。50代、60代へかけて棒ブラフが短くなっていきます。
つまり。一番睡眠不足を感じている年代が40歳代ということです。
この棒グラフで見るかぎり、高齢者は睡眠不足ではないように見えますが・・・・。
睡眠時間の長さと安眠は別!
前図「睡眠の状況」は、「睡眠で休養があまりとれていない」「まったくとれていない」、この2つの質問の集計です。
各年代でちょっと気になるのは、50代が、平成21年度~平成29年度の調査結果で右肩上がりになっていること。心身ともに疲れを感じている人が増えてきたということですね。
60代と70代では、若い世代と比べて睡眠不足を感じている人が少ない結果になっています。
しかし、実際には加齢によって睡眠の質が落ちているために、深い眠り(ノンレム睡眠)の状態が少なくなっているのです。
その状態を表しているのが、次の習慣です。
- 一度起きると二度寝できない
- ちょとした物音で目が覚める
- 夢をよく見る
- 夜中トイレに起きる
いずれも、眠りが浅い(レム睡眠)状態で、脳が活動しているために、わずかな刺激にも敏感に反応している結果です。
高齢になると、睡眠が浅くなって熟睡していませんが、昼間忙しく働いている現役世代と違い、日中うたた寝したり、リラックスしている時間が多いために、それほど睡眠不足を感じていないだけのようです。
高齢者は「睡眠に不満」との調査結果も
「睡眠の状況」では、高齢者ほど”睡眠で休養がとれている”ようですが、一方でこんな調査結果もあります。
睡眠に不満を感じている人が、高齢者になるほど増えていきます。
オムロンのサイトによれば、
この1ヵ月間に眠れないことが「頻繁にあった」「ときどきあった」という人は、男性は50歳代が50%、60歳代が56%、70歳以上が59%。女性も50歳代が57%、60歳代が64%、70歳以上が63%で、いずれも若い世代よりかなり多くなっています。
この出典は確認していませんが、事実であれば、「睡眠による休養」の感覚と、「睡眠不足」とは別、ということになります。
老化による睡眠時間減少は1時間
高齢になると、睡眠時間が短くなると言われますが、高齢者に必要な睡眠時間は、若い人と比べて1時間程度だそうです。
立正大学心理学部教授・西松 能子博士(医学)によれば、年齢と睡眠時間との関係は次のようになっているとのこと。
18歳になると、7時間~9時間の睡眠で十分だといわれています。それ以降は、10年で10分短くなります。45歳では6時間?7時間、65歳では6時間というわけです。
年齢とともに早くなる就寝時刻
年齢とともに、就寝時刻はだんだん早くなっていきます。
男性の場合、曜日によっても変わりますが、だいたい次のような時間帯が就寝時刻です。女性は、男性より全体的に早めですが、年代別の推移は同じ傾向です。
〇 30~39歳 23:00~0:00前後
〇 40~49歳 23:00~23:30前後
〇 50~59歳 23:00~23:30前後
〇 60~69歳 22:30~23:00前後
〇 70~79歳 22:00~22:30前後
特に、定年後の60代以降は、就寝時刻が早くなりますが、これが起床時間の早さに関係しているとの見方もあります。
若い時と比べて、睡眠時間が1時間ほど短くなったうえに、就寝時刻も1時間ぐらい早くなりますから、合計すると2時間!
現役時代、朝7時に起きていた人なら、5時起床!
日光を早い時間から浴びると体内時計も早くなる
体内時計は、日光を浴びることでリセットされて1日が始まります。
現役当時7時に起きていた人が、5時に起きるようになれば、体内時計もそれに合わせてリセットされますから、夜早い時間帯に眠くなってきます。
高齢になるほどこの傾向が強くなりますから、結果的に、”早寝早起き”になってしまうわけです。
深い睡眠が出来ればいいのですが、初めにお話ししたように、睡眠が浅いために、健康的な早寝早起きではありません。
高齢者にとっては夜のブルーライトがプラス効果
夜、パソコン作業やスマホ操作をすると、カラダのリズムが夜型になって、日中眠気が出たり体調不良の原因になると言われます。
これは、年齢の若い人たちには良いアドバイスですが、高齢者にとっては必ずしも良い習慣とは言えないようです。
高齢者の場合、逆に、多少パソコンやスマホ、照明のブルーライトなどで、睡眠時間を遅らせたほうが良いとする専門家もいます。
体内時計が正常に戻れば、日中のうたた寝などが少なくなり、眠りの質も改善するでしょう。
睡眠の質を高めるL-テアニン
L-テアニンの他にも、睡眠の質を改善する成分としては、L-トリプトファン、レシチン、グリシンが知られています。
特に、L-テアニンを配合した【機能性表示食品】サプリメントが数多く発売されていますから、目にした方もいると思います。
L-テアニンは緑茶のアミノ酸で、お茶を飲んでほっとするのはテアニンの作用。お茶で目が覚める効果は、カフェインによるものなので、L-テアニンの効果とは正反対!
なんだか、不思議ですね。また、玉露など上質なお茶ほど多く含まれているようですが、寝る前にお茶、飲めませんよね。
となると、サプリメントで摂取するのが効果的ということになりそうです。
L-テアニンのカラダへの影響は?
L-テアニンは、機能性関与成分として、リラックス効果や睡眠を促す効果が期待されています。
一方で、厚生労働省のデータベースにおいて、”ヒトでの有用性については信頼できる十分なデータは見当たらない”としています。また、”短期間の摂取ならば安全性が示唆されている”との記述もあります。
しかし、米国食品医薬品局(FDA)においては、2006年に「一般に安全と認識される食品」(GRAS)に認定されていますから、安全性が確認されていると考えていいようです。
そもそも、日本人は、毎日お茶として飲み続けてきた実績がありますよね。
まとめ
”睡眠の質” が盛んに言われるようになりました。
ストレスや生活習慣、食事などが、睡眠に与える影響が分かっていますが、一度乱れた習慣を改善するのはなかなか難しいですね。
もしかしたら、乱れた睡眠そのものがリズムになってしまっているのかもしれません。
中高年になると、若い時のように無理がきかなくなりますが、それは睡眠中に体が十分回復していないことにも起因しています。
不眠や睡眠不足は、肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病、うつ病などに深くかかわっていることが分かっています。
症状が出る前に、生活習慣を見直したほうがよさそうです。
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